ABA:応用行動分析56は『他者との相互作用で人生に彩りを添える、「固定化された生活パターン」を変える』というタイトルで書いていきます
1つ前のコラム「毎日の固定化された生活パターンは幸せか、不幸せか?(ABA:応用行動分析コラム55)(https://en-tomo.com/2024/06/28/fixed-daily-life-patterns-is-happy-or-unhappy/)」で「毎日だいたい同じことを繰り返しているな」ということを「固定化された生活パターン」と称してブログを書きました。
そのブログ内で特に大人になるとある程度に日常が「固定化された生活パターン」になってしまうのは仕方のないことなのかもしれないとも書いて、
そして「毎日だいたい同じことを繰り返している」場合もABAでそのことを考えればその行動は強制されたものでは無く自発的に行っており、
自発的に行っているのであれば「強化子が伴っている」と考えることをご紹介し、強化子が伴う行動は、
「正の強化」・・・自分で選択して好んで自発的に行っている行動
「負の強化」・・・環境より求められ、そのプレッシャーを解消するために自発的に行っている行動
の2種類の行動があるとご紹介しました。
1つ前のブログ内容も引き継ぎ本ブログ内でも「固定化された生活パターン」については、
毎日だいたい同じことを繰り返している
といった状況で、「毎日」でなくとも、
平日はだいたいこんな感じで土曜日はこんな感じ、日曜日はこんな感じ、たまの祝日もだいたい同じショッピングモールに行って買い物をして1日が終わる
こういった週間、月単位のブロックで見たときにだいたい同じという場合も含めて、
「自分の生活パターンが固定化されているな」ということ場合に該当するものだと考えてください。
1つ前のブログ内容では結論として、
「好きなことをやる時間を増やすのはどう?」
そしてもっと詳しく言えば、
何か興味のあることをやって行く中で社会的な価値や規範とは違った、自分自身の価値を発見し、それをモチベーションとして行動することを増やす
ということが「正の強化行動」にあたり幸せなのではないか、ということで結論づけました。
「生活が固定化されている」というのは、1つ前のブログを参考にすればとても幸せな場合も十分考えられるでしょう。
ただ、何も考えずに「お前の生活って変化ない(固定化されている)ね」と人に言われたとすれば?
「ちょっとあなたの生活ってつまらなさそうじゃない?」と言われたような気にもなり、ポジティブに聞こえないかもしれません。
そして私自身「生活が固定化されている」人間で幸せな場合ではあると思うのですが、
「生活の中にちょっとした変化も欲しいよねぇ」と思うのも本音です。
今回はこのちょとした変化のことを「彩り」と捉えて考えて行きましょう
「固定化された生活パターン」に彩りを与える方法について今回は作戦を考えて行きたいと思います。
ABA的に私が考える「生活の中に少しの彩りを添える作戦」について今日は書いて行きましょう。
「彩り」、「相互作用」とは?
本ブログタイトルは「他者との相互作用で人生に彩りを添える、「固定化された生活パターン」を変える」です。
まずはタイトルにある「彩り」と「相互作用」とは何かを見て行きましょう。
「彩り」をWebで調べました。
Weblio辞典によれば彩り(いろどり)とは、
「色の変化や多様性を表す言葉である。一般的には、食事の盛り付けや風景、衣服、芸術作品などにおいて、多くの色が組み合わさっている状態を指す」
とのことです(閲覧日 2024.5.27)。
上のWeblio辞典を参考に考えると、彩りは「色」についての言葉だと思うので、「人生に彩り」というのは比喩表現だと思います。
ただ一般的に「人生に彩りを添える」というような表現も、このブログで初めて見たと言う人も少ないくらい、日常的に使われている表現でしょう。
さて、私が思う「彩り」のキーワードは上で太文字とした「多様性」です。
そして本ブログタイトルに出て来ているもう一つの言葉「他者との相互作用(そうごさよう)」ですが、
Weblio辞典によれば相互作用とは、
互いに働きかけ、影響を及ぼすこと
です(閲覧日 2024.5.27)。
私たちは人から影響を受け、影響を与えて変化して行きます。
相互作用、本ブログのタイトルにもした人間関係の相互作用、他者との相互作用はそのような事象のことですが、相互作用を見る上でABAはとても有効な手段です。
例えば大河内 浩人 (2007) は行動分析という学問をあえて一言で表すことを試みるのならばそれは「個体と環境との相互作用を明らかにする学問」だと述べました。
「行動分析」という学問を応用したものが「応用行動分析(Applied Behavior Analysis)」、
略してABA(本ブログで扱っている学問)となりますので、ABAは相互作用を見る上で有効と言うより、相互作用を見て行くことで解決策を導く手段と言っても良いでしょう。
そのためABAは相互作用を見るのに最適な学問かと思います。
さて、以下からここまでご紹介して来た「彩り」と「相互作用」から考え、「今の人生に彩りが欲しいなぁ」と思っているとき、どういった作戦が考えられるか見て行きましょう。
他者との相互作用で人生に彩りを添える
1つ前のブログ内容はどちらかと言えば自分一人で考える「固定化された生活パターン」自体の幸福論でした。
今回のブログテーマは「固定化された生活パターン」に彩りを添える方法です。
テーマの1つ「相互作用」、誰と関わって幸せな経験、楽しい経験を得るときの2つのパターンを考えてみましょう。
(1)自分自身が好きな体験に、好きな人も関わってくれて、より楽しく感じる
(2)自分自身が好きな人の体験に関わり、楽しさを感じる
「(1)自分自身が好きな体験に、好きな人も関わってくれて、より楽しく感じる」は例えば野球観戦を自分が好きで、好きな人が一緒に野球観戦に行ってくれる
というイメージです。
「(2)自分自身が好きな人の体験に関わり、楽しさを感じる」は例えば、好きな人が野球観戦が好きで、特に自分は野球観戦に興味はないものの、好きな人が行こうというのでついていった
というイメージとなります。
今回私がお勧めするのは「(2)自分自身が好きな人の体験に関わり、楽しさを感じる」です。
ABAでは行動を考えるとき、
「A(Antecedent):先行状況(行動に先立つ環境)」、「B(Behavior):行動」、「C:(Consequence):結果」の3つのユニットに分けて考えます。
このような行動と前後を含めた関係性は「三項随伴性(さんこうずいはんせい)」と呼ばれるものです(参考 Raymond .G .Miltenberger, 2001)。
奥田 健次 (2012)は、
人や動物の行動の原因について考えるときは「真逆」に見なければならないのである
つまり、その行動がなぜ起きるのかについての理由を考えるとき、その行動の前に何が起きたのかを考えるよりも、その行動の後に何が起きたのかを考えなければならない
と述べており、ABAでは奥田 健次 (2012)が述べているように行動が維持したり、増えたり減ったりするのは「行動をした後に伴う結果」の影響を強く受けると考えます。
しかし本ブログページでは、行動の前を変えることを推奨し、それによって「生活の中に少しの彩りを添える作戦」としたいです。
「行動の前を変える、彩りを添える、他者との相互作用で!」ということなのですが、
例えば「(2)自分自身が好きな人の体験に関わり、楽しさを感じる」を行うと、
その人がいなければ、自分一人では生起する確率が低かった行動が引き起こされる
ことが生じるでしょう。
上で出した好きな人が野球観戦が好きで、特に自分は野球観戦に興味はないものの、好きな人が行こうというのでついていったという例は、
好きな人というきっかけ(行動の前)がなければ、あなたが野球観戦に自発的に一人で行く確率が低いということを示しています。
上で行動が維持したり、増えたり減ったりするのは「行動をした後に伴う結果」の影響を強く受けると述べましたが、
結果的に野球観戦に行った(行動)のちの結果、つまらなければ、今後、野球観戦に行く頻度は下がって行くでしょう。
これがABAで行動に伴う結果がその行動に影響を与えるという理由です。
しかし「行動の前」はあなた一人では自発的に行う確率が低い、1回目の行動のきっかけを与えてくれます
あなた一人では自発的に行う確率が低い行動は「固定化された生活パターン」の中にない新しい行動であると考えることができ、他者がそれを提供してくれたとき、「彩り=多様性」をあなたの人生にもたらしてくれるでしょう。
さて、これが作戦の方向性となります。
では具体的にどのように作戦を進めていけば良いか、一緒に考えてみましょう。
「固定化された生活パターン」に彩りを添える作戦
ここまで書いてきた作戦を簡単に言えば、
自分はあまりしたこと(普段すること)がないけれども、相手が普段している相手の好きな行動についていって一緒に体験する
ということです。
行った結果つまらなければもうその活動にはついて行かないと言うのも良いでしょう
「彩り」とは「多様性」である、そして「多様性」とはあなたの人生にあまりなかった要素を組み入れるのであれば、いかにあなたの人生にあまりなかった1回目を引き起こすかが大切です。
1回目に行った結果楽しかったとします。
個人的に思っていることは、楽しかったとしても、別に継続して今後も一緒に行かなくても良いです。
ある程度に日常が「固定化された生活パターン」になってしまうのは仕方ない、と書きましたが、普段、あなたも忙しく過ごしているかもしれません。
だから「楽しかったから」と行って義務的に何度も付き合わないといけないと言うものでもないでしょう。
ご無理のない範囲で。
「なかなか行く時間ないけど、また時間があったら行きたな」くらいの軽い気持ちで良いと思います。
しかし仮にもう行くことがなかったとしても、あなたのその人生の瞬間に楽しさを体験することはあなたの人生に彩りを添え、少し、あなたの人生を豊かにしてくれたということになるでしょう。
これは感謝すべきことです。
「固定化された生活パターン」を変える作戦として私から2つの提案をします。
相手が好きな活動について行く
例えば私は友達と2人で遊ぶときに「2人ともやったことないけどやりたいこと、なんかやってみようや」と言って車で出かけ、ボルダリングやVRゲームを楽しんだ経験があるのですが、これは実際に楽しいです。
でも実際この方法で遊びをやってみると2人ともやったことがないやりたいことを見つけるまでに意外に時間がかかり、
ボルダリングやVRゲームを楽しんだ日もあるのですが、結局何も見つからず、車で遠出してご飯だけ食べて帰る、ということもしばしばありました。
「2人ともやったことない、なんかやってみようや」は見つかればこそもの凄く楽しいのですが難易度が高いでしょう。
難易度が高いだけでなく見つからなかったとき虚しいのと、今回のテーマは「人生に彩りを添える」ことについて少し多様性をもたらすくらいのイメージで書いていますので、今回はもっとライトな提案、
私からの1つ目の提案は「相手が好きな活動について行く」となります。
相手が好きな活動は、相手は好きなので得意だったり慣れていたり、楽しみ方を知っている可能性が高いでしょう
例えば私はスーパーに行って食材を買ってきて料理をするのが好きなのですが、私とスーパーに行くと、スーパーにあまり行ったことがない(普段コンビニご飯ばかりとかの人)よりも楽しいと思います(笑、自分で何を言ってるんや)!
そして普段、自炊をしない人よりも私が作った料理の方が美味しい確率が高いため、結果的に「楽しかった」と言う体験を得る可能性も高いでしょう(笑、これも自分で何を言ってるんや)!!
このように相手が得意だったり慣れていることの方が良いのではと思うので、例えば相手に、
・ 普段、何してるん?
・ ご飯とか作ったりするん?
・ 服とかどこで買ってるん?
・ 趣味は何?
・ いっつもどこで遊んでるん?
みたいに質問をしてみて、その中でちょっと興味を持てて自分があまり普段することがない活動を選び、ついて行くことをお勧めします。
ファン多い活動について行く
私からの2つ目の提案は「ファンが多い活動について行く」です。
O.Ivar Lovaas (2003) は自閉症の専門家ですが、
丸いものを丸いものに、四角いものを四角いものに合わせるという刺激と刺激のマッチングは、人の行動を維持する強化子の働きをするらしい
と述べました。
私も自閉症児のお子様へ療育をしていて、多くのお子様が、
パズルがはまらない(マッチングしない)よりも、はまる(マッチングする)方を好む傾向がある
と思いますし、もっと言えば「ゴルフ」や「バスケットボール」もより高度なマッチングによって得点を得られるゲームだと思います。
そして「ゴルフ」や「バスケットボール」はファンが多いです
もしかしたら人類は物事がマッチングする瞬間が好きな傾向があるかもしれません。
※ このマッチング(同じであること)が過剰すぎると自閉症のお子様の示す強いこだわりや常同性となるのかもしれませんが・・・
ここで私が言いたいのは、
人類の趣向性として人類ってこう言った活動が概ね好きになる傾向というのがあるのかもしれない
ということです。
例えば「雨空」よりも「晴れた空」の方が気持ち良いと思う人が多い(昔は飢餓状態で雨を渇望してた人がいてそんなことはないと言うツッコミとかは一旦無しで)とか、
リラックスできる空間や音楽の特徴があったり、可愛いと思える造形や香りの傾向があるかもしれません。
あなたも人類ですので、多くの人類が惹かれる特徴を持つ(ファンが多い)活動を楽しめる可能性が高いのではないか、と私は考えています。
そのため私からの2つ目の提案は「ファンが多い活動について行く」です。
当たり前のことかもしれませんが、なかなかファンが多い活動であると知っていても、きっかけがなければ足を運ぶことも無いでしょうし、「相手が好きな活動について行く」ことを実践するとき、
「どの活動について行こうかなぁ?」と悩んだときは、もちろんあなたの趣向性も考慮した上で、「ファンが多い活動について行く」というのもいかがでしょうか?
本ブログで『他者との相互作用で人生に彩りを添える、「固定化された生活パターン」を変える』作戦は自分一人では生起する確率が低かった行動が引き起こすため、
「(2)自分自身が好きな人の体験に関わり、楽しさを感じる」を行う、
そのときの作戦として「相手が好きな活動について行く」と「ファン多い活動について行く」ことをご提案いたしました。
さいごに
今回1つ前のコラム記事とセットで書くような感じで書いてきました。
もしお時間あれば1つ前のコラム記事も是非ともご覧になっていただきたいです!
1つ前のブログそして本ブログ内でも、特に大人になるとある程度に日常が「固定化された生活パターン」になってしまうのは仕方のないことなのかもしれないと書きましたが、
私自身も「固定化された生活パターン」になっていて「生活の中にちょっとした変化も欲しいよねぇ」と想いも本音として持っています。
実は今回のブログページで書いた内容は私自身は正直そんなに実践できていなくて、
「ABA的に作戦を考えてみたんですけど、こんなんどうすか?」という内容です
理論的にはそんなに変なことを書いていないと思うので、私自身も時間を作ってちょっと試してみたいと思います。
「1日時間を取らないといけない」となると私自身も凄くハードルが上がってしまうように感じるので、お昼だけとか、夜だけとか、そういったところから始めて行きましょう!
人生100年時代と言われ、私のおじいちゃんだった時代と比べると人生の中で多くの時間を持つことができるようになりました。
例えばLynda Gratton・Andrew Scott (2016) は今先進国で生まれるこどもは50パーセントを上回る確率で105歳以上生き、過去200年間、平均寿命は10年に2年以上のペースで伸びてきたと述べています。
自分のやりたい活動に人生の時間を費やすことも楽しい、そして自分が知らなかった楽しい時間を人生の中で過ごすことも楽しい、
そういったいろいろな「楽しい」を詰め込んでいくこと、これは今、私が持っている人生を豊かにするための方向性です。
【参考文献】
・ Lynda Gratton・Andrew Scott (2016) The 100-Year Life Living and Working in an Age of Longevity 【邦訳: 池村 千秋 (2016) LIFE SHIFT 東洋経済新報社】
・ 奥田 健次 (2012) メリットの法則 行動分析学・実践編 集英社新書
・ O.Ivar Lovaas (2003) TEACHING INDIVIDUALS WITH DEVELOPMENTAL DELAYS 【邦訳: 中野 良顯(2011) 自閉症児の教育マニュアルー決定版・ロヴァス法による行動分析治療 ダイヤモンド社】
・ 大河内 浩人 (2007) 「大河内 浩人・武藤 崇 編著 行動分析 ミネルヴァ図書 p1-12」
・ Raymond .G .Miltenberger (2001)Behavior Modification : Principles and Procedures / 2nd edition 【邦訳: 園山 繁樹・野呂 文行・渡部 匡隆・大石 幸二 (2006) 行動変容方入門 二瓶社】
・ Weblio辞典 閲覧日 2024.4.21 https://www.weblio.jp/content/%E5%BD%A9%E3%82%8A
・ Weblio辞典 閲覧日 2024.4.21 https://www.weblio.jp/content/%E7%9B%B8%E4%BA%92%E4%BD%9C%E7%94%A8#google_vignette