ABA自閉症療育は、
行動ののちに強化子を伴わせ、直前の行動を増やす
ことによって適切な行動を増やし、不適切な行動を減らして行く方法です。
ABA自閉症療育では「行動ののちに強化子を伴わせられるかどうか」は上手く行くかどうかの要となりますから、本ブログページにて、
・ どのようにアイテムの強化子を選定すれば良いか?
・ 社会的強化子も選定する
・ 選定した強化子を適切に提示する方法
・ 実際に選定した強化子を使用してみるーアイコンタクト課題
をご紹介しましょう。
今回のブログページでは、最後の「実際に選定した強化子を使用してみる」では「名前を呼んだら目を合わせる」というアイコンタクトの課題を使用し実践するところまで行います。
どのようにアイテムの強化子を選定すれば良いか?
本ブログ内では何度かご紹介したことがあるのですが強化子には「お菓子」や「ゲーム」と言ったアイテムの強化子と、「くすぐり」や「褒め」など相手との関わりの強化子があります。
個人的な体感ですが前者の「アイテムの強化子」の方がABA自閉症療育を始めたての方は扱いやすい印象です。
後者は「社会的強化子」と呼び、ABA自閉症療育においては社会的強化子はとても重要とされます。
まずは扱いやすい「アイテムの強化子」の選定方法をご紹介しましょう。
選定方法は2つです。
個人的には1つ目だけ実践してもらっても大丈夫だと思います。
2つ目の方法は1つ目だけで上手くいかなかったときに使用する方法、と思ってもらって構いません。
一応、2つ目の方法も本ブログページでご紹介しておきます。
1つ目
1つ目は親御様から見てお子様の好きなお菓子もしくは飲み物、そしておもちゃを3つずつ紙に書いてみてください。
合計6つのお子様の「好き」が記述できました。
これで強化子選定1つ目は終了となります。
2つ目を行わなくともここで終了してもらっても構いません。
その場合は次の項目まで読み飛ばしてください。
2つ目
2つ目の方法は1つ目をさらに発展させた方法です。
お子様の好きなお菓子、おもちゃを3つずつ紙に書いたのちそれらをお子様の前に並べます。
例えばABCDEFの6つを並べたとしましょう。
そして、お子様がその中のどれを自発的に選択するかを観察します。
お子様がAを選択した場合、Aで5分程度遊んでもらいましょう。
もしAがチョコレートやクッキーなどお菓子、コーラなどの飲料の場合はお子様に提示した量を食べてもらう・飲んでもらいます。
そのためチョコやクッキーはパッケージ1袋まるまるではなく、お椀や紙皿に入れ適量(2〜4個くらい、お子様や物によるがちょっと満足するくらい)を示してください。
5分経った、もしくは食べ終わったらAは回収し、次はBCDEFを並べてお子様がその中のどれを自発的に選択するかを観察します。
次にお子様がBを選択した場合、Bで5分程度遊ぶ、もしくはBを食べ終わる・飲み終わるのを待ちましょう。
最後に次はCDEFを並べてお子様がその中のどれを自発的に選択するかを観察します。
ここまで3回繰り返しましたが3回程度繰り返せば良いでしょう。
3日ほど上の条件で3回行い、強化子選定を行えば「おおよその強化子の強さランク」が把握できます。
ざっくりと「おおよその強化子の強さランク」を頭に入れているだけで大丈夫ですので日によって「強化子の強さランク」が変わることは問題ありません。
おおよその傾向がわかれば大丈夫です。
なぜ強化子の強さランクを知っていると良いのでしょうか?
強化子は「飽和化」と「遮断化」など「確立操作(かくりつそうさ)」の影響を受けます。
「確立操作」について気になった方は本ブログ検索窓にて検索いただければと思いますが、簡単に言えば「いかに強い強化子でも与え続ければ飽きてしまう」などは強化子が受ける影響の1つです。
例えばお菓子やジュースは「お腹の減り具合(満腹状態)」に影響を受けます。
満腹状態であればお菓子やジュースの魅力(強化価値)は下がってしまうでしょう。
例えば手に入れた「おおよその強化子の強さランク」の情報は、
療育時間の最初は1番強い強化子を使い、飽きてきたら次に強い強化子を使う
でも良いですし、
療育中一番お子様の負担感が強い課題には1番強い強化子を使い、それ以外は2番目に強い強化子を使う
などの使い方ができます。
今このブログページをご覧になってくださっている人は「今すぐ強化子を使ってABA自閉症療育をやってみたい!」というモチベーションを持ってくださっているかもしれません
そのためこののちに続く本ブログページ「実際に選定した強化子を使用してみる」に読み進めてもらうときは、2つ目の強化子選定を行う場合は1日だけ行ってみて一番強かった強化子を使って実践を行ってみましょう。
もちろん2つ目の強化子選定までは行わず「1つ目の親御様から見てお子様の好きなお菓子、おもちゃを3つずつ紙に書いてた」ものを使用して実践してもらっても大丈夫です。
社会的強化子も選定する
「社会的強化子」という「人との関わりでお子様の好きな関わり」を3つ考えてみてください。
例えば?
・ くすぐり?
・ 抱っこ?
・ ハグ?
・ 高い高い?
・ マッサージ?
・ ハイタッチ?
・ あたまを撫でてあげる?
見つかりましたでしょうか?
3つが難しい場合は少なくとも1つは考えてみてください。
普段関わっているときにお子様が喜んでくれる関わりで構いません。
社会的強化子、特に「くすぐり」については私は奥が深いと思っていて「身体をくすぐるときのコツ、ABA自閉症療育、身体強化のポイント(ABA自閉症療育テクニック3)(https://en-tomo.com/2022/04/01/techniques-to-tickle-the-body/)」も是非ご参照ください。
選定した強化子を適切に提示する方法
強化の効力に影響を及ぼす要因を以下いくつかご紹介します。
強化の効力に影響を及ぼす要因はご紹介するもの以外にもありますが、以下のものを今回これから実践するときに意識してみてください。
「強化スケジュール」・・・増やしたい行動が生起して毎回強化子を提示する(連続強化スケジュール)のか、例えば行動2回につき1回の強化子を提示する(間欠強化スケジュール)のかにより、どのように学習が進むのかが違います
→→→今回は「連続強化スケジュール」で行ってみましょう。お子様の増やしたい行動が出現するたびに毎回、強化子を提示します
「即時性」・・・行動が生起してから強化子が随伴するまでの時間。一説では行動後0.5秒後に提示したときと比べ1秒後に提示したときでは強化子の効力が25パーセントにまで落ちてしまう
→→→そのため、お子様の増やしたい行動が出現したらできるだけ早く強化子を提示するようにしましょう
「確立操作」・・・強化子が一定時間手に入らないと強化子の価値は上がり、一定時間内にたくさん手に入ると強化子の価値が下がること
→→→そのため、使用する強化子についてはお勉強を始める少なくとも1時間前くらいからは使用させない時間を作ってください。また、食べ物や飲み物を強化子として使用する場合はお腹が一杯過ぎない状況で使用するようにしましょう
「十分な量と強度」・・・行動後に強化子となる結果を伴わせたとしても、量が不十分であれば強化子として機能しない
→→→そのため、今回は強化子に触れる時間は30秒ほどは触れさせてあげ、多くても1分くらいにします。チョコレートやクッキーをあげるときは板チョコであれば1ブロック(1cm ✖️ 1cmくらい?)、クッキーであれば1枚くらいにします。今回は、そのとき「もっと欲しい」ということから荒れないようにまだ余っていることは見えないようにしましょう。
そののち、30秒から1分ほど休憩(自由活動)をさせてあげてください。
ここで書いた強化の効力に影響を及ぼす要因も意識しながら実践して行きましょう
(ABA自閉症療育テクニック3)(https://en-tomo.com/2022/04/01/techniques-to-tickle-the-body/)」も是非ご参照ください。
実際に選定した強化子を使用してみるーアイコンタクト課題
これから「名前を呼んだら目を合わせる」というアイコンタクトの課題を使用し、実践を行っていきますが、名前を呼んで目があったら強化子を提示します。
アイコンタクト課題は「名前を呼んだら目を合わせる」で例えばお子様の名前が「たろうくん」であれば、親御様が「たろうくーん(たろう、でも可)」と呼び、呼び出してから5秒以内にたろうくんが自発的に目を合わせてきたら成功、というものです。
「たろうくーん」は目が合い続けるまで言い続けましょう。
今回のアイコンタクト課題では1メートルから2メートルくらい離れ、お互いの顔の高さを合わせて正面から名前を呼び、目があったら強化します。
何度も名前を言い続けるのではなく「たろうくーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん」と、目が合うまで「くーーーーーーーーーん」のところを伸ばして声を出し続けてください。
※ 「たろう」の場合は「たろうーーーーーーーーーー」で対応
目が合い続けるまで言い続けるのは本章次のページで書いて行く「誤学習防止」のためです
「呼び出してから5秒以内にたろうくんが自発的に目を合わせてきたら成功」、5秒という縛りがあるため、呼び始めて5秒経過しそうだなと思ったらお子様の両手を取り、親御様のこめかみらへんに持って行き、目が合うようにプロンプトしましょう。
ここまで「アイテムの強化子」と「社会的強化子」を集めてきました。
強化子を提示する際は上で書いた「選定した強化子を適切に提示する方法」も意識して行っていきましょう。
最初は上手くできなくても大丈夫です!
目があったタイミングで即時に「社会的強化子」を提示し、その後に「アイテムの強化子」を提示します。
例えば「たろうくーん」と名前を呼び目があったタイミングで「すごい!えらい」と言ってくすぐってあげて(社会的強化子の提示)、そして「これで遊ぼう!」と言って好きなおもちゃ(アイテムの強化子の提示)を渡す
を行いましょう。
「たろうくーん」と名前を呼び目が合うまでの速さが速くなっていれば成功です。
強化子としてあなたが提示した結果は機能しています。
このとき平均値を見ることが大切です。
例えば1回目2回目3回目と3回から5回くらいを目安に1タームとし、10回行ったとき、最初のタームと後半のタームで平均的に早くなっていれば上手くいっています。
1回目より2回目の方が速く目があったものの3回目は1回目よりも速いものの2回目よりは目が合うのが遅かった、となると少し不安になるかもしれませんがあまり気にしなくても大丈夫です。
さいごに
お子様に機能する強化子は見つかったでしょうか?
ABA自閉症療育はお子様の自発する適用的な行動を増やすことで成長を促し、また問題行動を減らしていこうとする方法です。
そのためお子様の自発する適用的な行動を増やすことに貢献する「強化子」の存在がマストとなります。
私の個人的な意見かもしれませんが、最初にお子様へ機能する強化子をしっかりと見つけておくことがとても大切でしょう。
また本ブログページでは「誤学習(ごがくしゅう)」というワードが出てきました。
お子様の発達の遅れが大きければ大きい程、誤学習してしまったとき修正が難しい印象を持っています。
そのため何かお子様へ知識を教えるとき、エラーレスラーニング(無誤学習)が大切であると考えられているのでしょう。
例えば今回のアイコンタクト課題をエラーレスラーニングにするため名前を呼び続けエラーが生じない設定を作りました。
もし「たろうくん、たろうくん、たろうくん」と何度も呼び目を合わせたとき強化子を伴わせるを行ってしまうと、「1回で名前を呼ばれても目を合わせなくても良い」というこちらの狙いとは違った形の学習が成立(誤学習)する可能性がありますね?
上のようにこちらの狙いとは違った形で学習が成立することを「誤学習」と呼ぶのですが、これは「エラーレスラーニング」によって予防することができます。
次の本章ブログページで「エラーレスラーニング」について書いて行き、エラーレスラーニングを行う際のポイントをお伝えして行きましょう。
どうぞよろしくお願いいたします。