ABA応用行動分析コラム48は「臨床心理士、公認心理師の人口は何%?私たちはどのように相談を聴くべきだろうか?協働関係」というタイトルで書いていきます
私は現在臨床心理士、公認心理師として主に発達障害、主に「自閉症」の療育領域で活動をしている心理カウンセラーなのですが、
臨床心理士、公認心理師としてどのように相談に乗るべきだろうか?ということを本ブログページでは考えて行きたいと思います。
さて最初に「臨床心理士、公認心理師の人口」について少し調べてみたのでそのこともご紹介しましょう。
今回のブログページの導入部分とさせてください。
意外と「臨床心理士」や「公認心理師」が少ないことに驚くかもしれません。
私はプライベートで友達は多い方だと思うのですが臨床心理士、公認心理師の人とプライベートな関係にて出会ったことは今までないです。
※ 私も臨床心理士、公認心理師を持っていないころからの大学・大学院の学生のころから在籍していた友達は別として
また私自身が、新しく出会った人に仕事を聞かれたとき「心理カウンセラーをしてます」と言ったとき、
結構「出会ったことない、珍しいね」と言われます
例えば今日、このブログページを投稿した日は2023年の10月27日、現時点で調べて出て来た数字としては、
臨床心理士は2021年4月1日現在で「38,397名の臨床心理士が認定」(一般社団法人 日本臨床心理士会)、
公認心理師は2020年12月の時点で「35,529名が公認心理師の資格保有者として登録しています」(一般社団法人 日本公認心理師協会)、
とのことでした。
心理学の業界にあまり詳しくない人は知らないかもしれませんが臨床心理士は国家資格ではないものの1988年からスタートした資格となります。
対して公認心理師は国家資格ですが2017年に心理職初の国家資格として新設されました。
公認心理師は国家資格ですが比較的新しい資格です。
上の人数を見てもらって日本ではそれくらいの人が臨床心理士や公認心理師の資格を持っているという現状です。
2023年の10月27日の時点で日本の人口は「2023年(令和5年)5月1日現在(確定値)」にて「1億2447万7千人」(総務省統計局)でした。
計算すると、
臨床心理士は人口の約0.03パーセントの方が所持しており、公認心理師も人口の約0.03パーセントの方が所持している(四捨五入)という結果です。
一万人に3人程度が持ってる、という計算結果となります。
まぁそりゃそう考えると、普段生活して中で職業関係以外だと出会う確率はかなり低いか
ちなみに比較対象として調べてみたのですが、
日本の弁護士の人口は2020年3月31日時点で42,164人とのことですので、現段階だと「弁護士よりもレアな職業かもしれない」とも言えるでしょう(弁護士白書、調べた日2023年10月27日)。
友達で弁護士になった人はいますが、弁護士の先生と普段、プライベートで新しく出会うことも私はそんなにありません。
またこれは臨床心理士、公認心理師の資格保有者がこれくらいの人数だよということで「心理カウンセリングをしている人口」を反映しているわけではないということは注意が必要です。
資格がなくとも心理的なカウンセリングを行なっている人もいるでしょう。
例えば「子育て相談」とか「人生設計コーチング」、「心を軽くするアドバイス」などについて資格がなくとも行なっている人もいると思います。
さて、そして臨床心理士、公認心理師にもいろいろな派閥や分野というものが存在します。
私はABAや行動療法という派閥です。
そして分野で言うと現在は自閉症療育という分野に特化しています。
このように派閥、分野があるということは他の分野もそうかもしれない(例えば歯医者でもインプラントに特化しているとか、医者も内科、外科、眼科など専門分野があるように)のですが心理学もそのような世界です。
臨床心理士、公認心理師の試験自体は幅広い分野の知識を網羅する必要がある(例えば専門領域で言えば自閉症、発達障がい以外にも認知症や統合失調症、不安障がいやうつなど)ものの、
実際にその分野で活動をするためには、試験で求められること以上のその分野についての知識や経験、技術が必要になるでしょう。
私はABAや行動療法という派閥で現在活動をしており、その活動の中でいろいろな方の話を聞いて一緒にどうすれば良いか考えて行っているのですが、
私自身が「どのように相談を聴くべきだろうか?」と考えていることについて今日は書いて行きたいと思います。
多分、私と同じ臨床心理士、公認心理師の方でも意見の違う方もいるでしょう。
それは臨床心理士、公認心理師にもいろいろな派閥や分野というものが存在するからかもしれません。
もし「私は違う」という人がいらっしゃいましたら私は決してその方と「対立」がしたいわけではないので是非、Twitterからご連絡をいただければ幸いです。
では以下、私自身が「どのように相談を聴くべきだろうか?」と考えていることについて「協働関係」をテーマにして書いて行きましょう。
臨床心理士、公認心理師はクライアントから話を聴き解決策を教えるのか?
あなたが何か困って臨床心理士、公認心理師、心理カウンセラーに話を聞いて欲しいと思ったとき、あなたはその問題をどうすれば解決できるのか教えて欲しいという目的を持っていらっしゃるかもしれません。
このとき、臨床心理士、公認心理師、心理カウンセラーは「教える側」で、クライアント様側は「教えられる側」となります。
もし臨床心理士、公認心理師、心理カウンセラーが情報を発信し、その情報に対してクライアント様側が反応するだけであれば、臨床心理士、公認心理師、心理カウンセラーとクライアント様の関係は、
臨床心理士、公認心理師、心理カウンセラー > クライアント様
ということになるかもしれません。
これは「教える側」、「教えられる側」の構図と思ってください。
しかし私もですが、実は多分多くの臨床心理士、公認心理師、心理カウンセラーはこのような構図では支援を行なってはいないでしょう。
私たちは上のような心理支援者側が「教える側」でクライアント様側が「教えられる側」の構図で支援するようなことを教えられて来ていないと思います。
「傾聴(けいちょう)」や「共感(きょうかん)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
これはどのような派閥、分野の臨床心理士、公認心理師、心理カウンセラーにおいても大切な技術と言えます。
しかし話を聞くだけで専門的なアドバイスは行わないのか?と言えばそうではありません。
全ての臨床心理士、公認心理師、心理カウンセラーの派閥、分野で専門的なアドバイスをしないかどうか、と問われると正直わからないところもあるのですが、
少なくとも私が行なっているABAや行動療法、そしてCBT(認知行動療法)などでは臨床心理士、公認心理師、心理カウンセラーからアドバイス、知識の共有をすることがあります。
私たちは専門家ですのでその疾患や状態に対しての専門知識をお伝えすることも大切な仕事です。
「心理教育」という言葉を知っていますか?
鈴木 晶子 (2009) によれば心理教育とは何がしかの問題や疾患とそれに対する支援や介入について情報を共有するために行われるものです。
鈴木 晶子 (2009) は対象となっている病気の症状や経過、症状や問題が発生する仕組み、ヨゴなどが挙げられ、さらに支援に対しての情報を伝えることも大切であると述べました。
そして実際にこうした話題を取り上げる際、知識を一方的に専門家から説明するという形を取らないことが重要、と述べています。
臨床心理士、公認心理師、心理カウンセラーから知識を共有する際でも、知識を一方的に専門家から説明するという形を取らない、これは本当に重要なことです。
そのような「心理教育」を行うとき私自身が気をつけていることがあります。
例えば問題行動の成り立ちなどを説明するときを考えてみましょう。
このとき、私はできるだけクライアント様側に確認をしながら行うようにしています。
問題行動の成り立ちにも一応セオリーはあるので、セオリー通りにそれが当たることも多いのですが、当たっていない人ももちろんいるわけです。
例えば説明をするときに、説明をする前に「今から、可能性の話をしますが、もし違うなと思ったら違うかもしれないとおっしゃってくださいね」など伝えて話し始め、
話の途中でも「・・・という可能性もあると思うのですが、それを聞いてどう思いますか?」と確認を挟みながら進めていきます。
基本的には私の趣向としては「できるだけ相手に話してもらう」カウンセリングを目指していますので、相手が話を行なっている中で気になったことの質問をし、
上で書いた説明をするタイミングはだいたい相手がある程度話し終わったあと、ということが多いです。
相手がある程度話し終わったあとに、こちらが説明をする前には上で書いたように「今から、可能性の話をしますが、もし違うなと思ったら違うかもしれない、とおっしゃってくださいね」など伝えて話し始めます。
そのように伝えて話し始める理由ですが、
クライアント様側は普通は今まで生きてきた経験から専門家の意見に対してアドバイスをもらったとき、少し違和感やしこりが残っていたとしても「わかりました」と言ってしまうのではないかということがあります。
専門家に話を聞いてもらう、このシチュエーションを生活の中で思い返してみてください。
多くの人は生活の中で「弁護士さん」や「社労士さん」や「○◯のコンサルタントさん」と言った話を聞いて相談に乗ってくれる専門家と話す機会はあまり無いように思います。
その中でも多くの人が話を聞いてもらったことのある、ある意味身近な専門家とは誰でしょう?
例えば私は「お医者さん」はそうだと思っています。
「お医者さん」に話を聞いてもらっているときを思い出してください。
自分では少し不安だなと思っていて気がかりなことがあったとしてもお医者さんから「この薬を飲んで、様子を見ましょう」と言われてしまうと、「はい」と言ってそれ以上何も言えなくなってしまう、こういう人もいるでしょう。
「専門家の先生が言っているのだから(ちょっと自分自身で咀嚼しきれていないところもあるけど)、正しいのだろう」と、少し違和感やしこりが残っていた状況であったとしてもそれを解消せず話し合いを終了してしまうかもしれません。
とは言えもちろん時間の枠があるので、話が聞ける時間に上限があることも承知しています。
ただその中でもできるだけそのような少しの違和感やしこりが残らない形で話が聞ければと思っています。
またそのことはアセスメントの精度を上げることにも貢献するでしょう。
さてここまでの内容をまとめると、
私は臨床心理士、公認心理師、心理カウンセラーとしてこちら側からクライアント様へ知識を共有する場面でさえ知識を一方的に専門家から説明するという形を取らないことを意識しています。
臨床心理士、公認心理師、心理カウンセラーとクライアント様との関係性について、
臨床心理士、公認心理師、心理カウンセラーが「教える側」で、クライアント様側は「教えられる側」ではないということが大切です
次にでは「どう言う関係で行なっていけば良いか?」について私の考えを書いていきましょう。
ブログのページタイトルにもなっている「協働関係(きょうどうかんけい)」です。
臨床心理士、公認心理師、心理カウンセラーとクライアント様の協働関係
臨床心理士、公認心理師、心理カウンセラーは心理学の専門家となります。
但し、臨床心理士、公認心理師、心理カウンセラーは心理学の専門家ではあるものの、例えば自閉症療育で言えば、
その人のライフスタイルやお子様との関係性、お子様の趣向性などについては確実に臨床心理士、公認心理師、心理カウンセラーよりも親御様の方が詳しいと言えるでしょう。
このように考えると、親御様はお子様の専門家なわけです。
臨床心理士、公認心理師、心理カウンセラーと親御様ではお子様と一緒に生活している時間が全く違います。
また接している場面の多様さも違います。
だから私たち臨床心理士、公認心理師、心理カウンセラーは現在の状態や介入方法をアセスメントするためにも相手から話を聞いて「教えてもらう」必要があるのです。
その情報をもとに私は上で書いたように「今から、可能性の話をしますが、もし違うなと思ったら違うかもしれないとおっしゃってくださいね」など伝え話し始め、
話の途中でも「・・・という可能性もあると思うのですが、それを聞いてどう思いますか?」と確認を挟みながら、
今考えている現状のアセスメントを聞いて違和感等がないかどうか相手にも聞いてもらいます。
また一緒に介入方法(解決方法)等を詰めていくのですが、このときも介入できるリソースがご家庭によっても違う(例えば両親が両方働いているかどうかとか、祖父母が同居しているかとか、夫婦の関係性とか、通っている園や学校の協力の具合だったり)ため、
詰めている介入方法等が現実的に可能かどうかも確認をしながら進めて行く必要もあるでしょう。
ブログタイトルに「協働関係」とありますがMicheal Bruch・Frank W. Bond (1998) はケースフォーミュレーションにおける協働関係について、
ケースフォーミュレーションをする面接者にとってクライアントとの関係性は、目的のための手段として位置付けられる。
面接者はクライアントとの協働関係を形成することによって、正確な予測をするために必要な情報を得られる環境を整えることができる。
と述べています。
※ 私自身が思うケースフォーミュレーションについても過去にブログ記事がありますので検索窓から検索し是非ご覧ください
クライアント様が億劫になることなく一緒に協力して問題を解決して行きたい、そのためには正しい情報を相手(この場合はカウンセラー)に伝える、という意識を持って話をしてくれる。
協働関係とは以上のような関係性です。
そのため私は自身とクライアント様との関係性として、「一緒に協力してなんとか解決策や方向性を模索して行く」という関係性を築くのが大切だと考えています。
専門家とクライアント様がタッグを組み、クライアント様の未来をどのようにして行きたいか(自閉症療育の場合はお子様やご家族の未来)、一緒に1枚の絵を完成させる感じで同じ方向を向き、協力しながら関わり合っていけることが理想的です。
さいごに
本ブログでは最初に「臨床心理士、公認心理師の人口」について述べました。
臨床心理士、公認心理師共に人口の約0.03パーセント(四捨五入)の方が所持している、という結構珍しい資格であることを改めて私自身も気がつきました。
みなさんの周りには臨床心理士、公認心理師の人はいますか?
そのような臨床心理士、公認心理師、そして心理カウンセラーとして相談に乗る職業として、今回のブログではどのような心構えでクライアント様と接するのかについて、私なりの考え方を記載しました。
私はブログ記事の最後に書いたように、専門家とクライアント様がタッグを組み、クライアント様の未来をどのようにして行きたいか(自閉症療育の場合はお子様の未来)、一緒に1枚の絵を完成させる感じで同じ方向を向き、協力しながら関わり合っていけることが理想的だと思います。
Twitterもやっていますので是非またコメント等いただけると嬉しいです。
最後まで読んでくださってありがとうございました!
【参考文献】
・ 弁護士白書 2020年版 https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/document/statistics/2020/1-1-1.pdf
・ 一般社団法人 日本公認心理師協会 https://www.jacpp.or.jp/document/pdf/99-abstract.pdf
・ 一般社団法人 日本臨床心理士会 http://www.jsccp.jp/link/#:~:text=2021%E5%B9%B44%E6%9C%881,%E3%81%8C%E8%AA%8D%E5%AE%9A%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82&text=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%BF%83%E7%90%86%E8%87%A8%E5%BA%8A%E5%AD%A6%E4%BC%9A%E3%81%AF,%E6%95%B0%E3%82%92%E6%8C%81%E3%81%A4%E5%AD%A6%E4%BC%9A%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82
・ Micheal Bruch・Frank W. Bond (1998)BEYOND DIAGNOSIS Case Formulation Approaches in CBT, First Edition 【邦訳 編訳:下山 晴彦 (2006) 認知行動療法ケースフォーミュレーション入門 金剛出版】
・ 総務省統計局 https://www.stat.go.jp/data/jinsui/new.htm
・ 鈴木 晶子 (2009) Ⅺ 問題に介入する (3)介入技法 ②集団・社会 心理教育 【(編)下山 春彦 よくわかる臨床心理学 改定新版 ミネルヴァ図書】