本章「シングルケースデザインと機能分析」の1つ前のページでは「A→B→A→B design(逆転デザイン)」について概要を書いてきました。
本章でご紹介して行くシングルケースデザインSCDの方法はKpolovie Peter James (2016) の論文で紹介された5つ中、3つのSCDデザイン、そして「AーBデザイン」という4つの方法であるとここまで述べて来ました。
それらは以下のものです。
・ AーBデザイン
・ A→B→A→B design(逆転デザイン)
■ Multiple-baseline design(多層ベースラインデザイン)
・ Changing-criterion design(基準変更デザイン)
本ブログページでは上の中から「■」のついた「Multiple-baseline design(多層ベースラインデザイン)」について解説をして行きましょう。
※ 以下「 Multiple-baseline design(多層ベースラインデザイン)」について本ブログページでは「マルチプルベースラインデザイン」と記述させてください
Multiple-baseline design(多層ベースラインデザイン):マルチプルベースラインデザイン
Ghaleb H. Alnahdi (2013) を参考にすれば「マルチプルベースラインデザイン」は以下の5つの方法によって実装ができます。
(1)3つ以上の「AーB」デザインのデータを実装すること
(2)異なるデータがベースライン段階において異なる長さの時間を含み、同時に計測をするわけではないベースラインの計測
(3)各参加者が同じ標的問題に取り組むために同じ介入を(順次に)受ける場合
(4)ターゲット課題設定が異なるが関連した問題の場面で、単一の参加者に同じ扱いを導入する場合
(5)場面は異なるが、単一の参加者に同じ介入を適用する場合
Ghaleb H. Alnahdi (2013) の述べているものの中で(1)(2)はマルチプルベースラインデザインを行なって研究を行う場合は必須の条件、
(3)(4)(5)については、
必須の(1)(2)に加えて(3)(4)(5)のどれかのデータを扱って行く、それがマルチプルベースラインデザインだと個人的には解釈しています。
つまり、
マルチプルベースラインデザインは『「(1)(2)」+「(3)or(4)or(5)」』という感じです。
以下、これらについて解説をしていきます
3つ以上のデータが必要
マルチプルベースラインデザインの前提として「(1)3つ以上の「AーB」デザインのデータを実装すること」ですが、これはそのままで、
マルチプルベースラインデザインには3つ以上のデータが必要だよということです。
そしてこのデータは「3人」や「3場面」などになります。
必要だよ、というのは、正しく行われた「マルチプルベースラインデザイン」によって得られた結果は科学的な根拠(エビデンス)を持つと考えることが可能となる、ということです。
「(2)異なるデータがベースライン段階において異なる長さの時間を含み、同時に計測をするわけではないベースラインの計測」についてはのちほど説明しますので一旦、置いてください。
(2)を飛ばして次は(3)(4)(5)について簡単に解説しましょう。
3つ以上のデータは「人」か「ターゲット」か「場面」
(3)各参加者が同じ標的問題に取り組むために同じ介入を(順次に)受ける場合
→ 3人以上に介入を行う。その介入が3人以上の人数で有効であったことが確認できた場合。3人以上なので4人、5人、6人と適用できた人数が増える分には構いません。人数が増えれば増えるほど基本的には科学性は上がることとなります
(4)ターゲット課題設定が異なるが関連した問題の場面で、単一の参加者に同じ介入を導入する場合
→ 1人の参加者に介入を行う。その介入が3つ以上のスキルに有効であったことが確認できた場合。3つ以上なので4つ、5つ、6つと適用できたスキルの数が増える分には構いません。数が増えれば増えるほど基本的には科学性は上がることとなります
(5)場面は異なるが、単一の参加者に同じ介入を適用する場合
→ 1人の参加者に介入を行う。その介入が3つ以上の場面で有効であったことが確認できた場合。3つ以上なので4つ、5つ、6つと適用できた数が増える分には構いません。数が増えれば増えるほど基本的には科学性は上がることとなります
最後、のちほど説明すると述べた「(2)異なるデータがベースライン段階において異なる長さの時間を含み、同時に計測をするわけではないベースラインの計測」ですが、
イメージしやすいよう、マルチプルベースラインデザインの例グラフを以下イラストで用意しましたのでご覧ください。
上のイラストは「(3)各参加者が同じ標的問題に取り組むために同じ介入を(順次に)受ける場合」です。
(3)では複数の参加者、同じターゲットに対し順次、同じ介入を導入しています。
「(4)ターゲット課題設定が異なるが関連した問題の場面で、単一の参加者に同じ介入を導入する場合」も上の例と同じ要領です。
(4)では単一参加者、複数のターゲットに対し順次、同じ介入を導入します。
「(5)場面は異なるが、単一の参加者に同じ介入を適用する場合」も上の例と同じ要領です。
(5)では単一参加者、複数の介入場面に対し順次、同じ介入を導入します。
ベースラインから介入開始の時期はズラしてスタートする
上のグラフ画像を見てもらえるとわかりますが、順次ベースライン期間をずらして介入の開始期間が始めることが「(2)異なるデータがベースライン段階において異なる長さの時間を含み、同時に計測をするわけではないベースラインの計測」です。
次の項目でどうしてマルチプルベースラインデザインが複数のデータを扱ったり、介入の時期をズラしたりするのか、理由を見て行きましょう。
マルチプルベースラインデザインで複数のデータを扱ったり介入時期をズラしたりする理由
ここまでご紹介しましたが、
ベースラインの期間が終了し、介入期間に入ったときから、3つのデータがそれぞれ介入期間に入ったタイミングから良くなっていることがわかると思います。
そのような中で「べースライン中は変化がなかったこと」と、
「介入期間に入ったタイミングから変化していること」はポイントです
日本行動分析学会 (2019) はマルチプルベースラインデザインについて書いているページで、
何らかの剰余変数が影響したときには複数の従属変数の値が変化するはずだと仮定できるのであれば最初の従属変数の値だけが変化したのは実験条件を導入したからだと考えられる
2つ目以降の従属変数についても同様に、ベースライン条件を継続している間は値が変化せず、実験条件を導入したときだけ値が変化することを繰り返し確認することで、実験条件の効果について信頼性を高められる
と述べています。
難しい文章なので、噛み砕いて行きましょう。
前提として
介入者は「その自分が行っている介入の効果があるかどうか?」が知りたいと思っていると考えてください
「介入の効果がある」というのは、何か支援をすることで相手のターゲット行動に良い変化が生じるということなのですが、
自分が行っている支援以外に相手のターゲット行動に良い変化を生み出す気がついていない何かがあるかもしれません。
もしかすると介入が上手くいったとしてもそれは介入者が行った支援によって達成したのではなく、
相手のターゲット行動に良い変化を生み出す気がついていない何かの影響である可能性があるということです。
上で書いた、
「剰余変数(じょうよへんすう)が影響したときには複数の従属変数の値が変化するはずだと仮定できるのであれば」
というのは、
もし相手のターゲット行動に良い変化を生み出す気がついていない何かが影響をしたとすれば、まだ介入が始まっていない別のベースラインにも影響が出て、そのベースラインの値も変化するだろうと仮定できるのであれば、
ということです。
例えば?
相手のターゲット行動に良い変化を生み出す気がついていない何かは流行っているアニメでも良いでしょう。
もし3人の同年齢の自閉症を伴うお子様にマルチプルベースラインを用いて「主張訓練介入」の効果を測っていたとします。
1人目のお子様に「主張訓練介入」を導入してから、1人目のお子様の主張スキルは向上して行きました。
でもそのタイミングでその年代のお子様のほとんどの人が見ている人気アニメで「自分の意見はしっかりと相手に伝えよう」という内容の放送があったとします。
これは「お子様の主張スキルの向上」に影響を与えるかもしれませんね?
また「影響を与えたのではないか?」と誰かに指摘されたとき、そのことに反論するためにはどうしたら良いでしょう?
2人目、3人目のお子様のベースラインに変化がないのであれば、これはアニメの影響である可能性は低く、『「主張訓練介入」の効果である』との主張は強くなります。
このようにして論を強くすることが「マルチプルベースラインデザインで複数のデータを扱ったり介入時期をズラす理由」です
上で書いた、
「2つ目以降の従属変数についても同様に、ベースライン条件を継続している間は値が変化せず、実験条件を導入したときだけ値が変化することを繰り返し確認することで、実験条件の効果について信頼性を高められる」
ということについては、ここまでの例も用いて噛み砕いてみましょう。
変化のなかった2人目、3人目のお子様もベースライン中に変化がないままであったにもかかわらず、「主張訓練介入」を導入したタイミングで「お子様の主張スキルの向上」が見られた場合、
これは『「主張訓練介入」の効果である』との信頼性が高まるよ、ということです。
David H. Barlow・Michel Hersen (1984) はマルチベースラインデザインについて、もともと「ABABデザイン」のように治療を中断することを避けるために実施されたと述べています。
※ 但しDavid H. Barlow他 (1984) はベースラインの独立性を明らかにしえないようなときには一時的な中断はそれなりの理由で納得できるとも述べました
1つ前のABABデザインをご紹介した『シングルケースデザイン(SCD)介入を除去することでエビデンスを得る「ABABデザイン(逆転デザイン)」(シングルケースデザインと機能分析4)(https://en-tomo.com/2022/11/04/scd-reversal-design/)』でもご紹介しましたが、
ABABデザインでは上手くいっている介入を効果検証のため、一時的に止めるということがあるのですが、マルチベースラインデザインでは止めなくても良いというのは臨床上のメリットとなるでしょう。
また日本行動分析学会 (2019) が述べていますが「ABABデザイン」を利用できない場合として、
(1)導入した実験条件を撤回できない場合
(2)実験条件を撤回しても導入前の行動が再現できない場合
を紹介しているのですが、教えた行動が忘れることができない場合なども元の条件に戻すことは困難です。
他にも例えばAgata Krasny – Pacini・Jonathan Evans (2018) はマルチプルベースラインデザインは、ベースラインに戻る必要性を排除しているため、リハビリ効果のような長期にわたる効果を伴う介入の評価に特に適していると述べています。
このようにマルチベースラインデザインでは元の条件に戻す必要はないので、「(1)導入した実験条件を撤回できない場合」や「(2)実験条件を撤回しても導入前の行動が再現できない場合」に使用できるというメリットがあるでしょう。
また科学的な客観性を高めるために、ベースラインから介入への移行時期については介入開始点間の適切な間隔を指定したのち、介入の開始点はランダムに割り当てる必要があるようです(参考 Michele A. Lobo・Mariola Moeyaert・Andrea Baraldi Cunha・Iryna Babik, 2017)。
そしてベースラインは安定してから介入を始めて行く必要があります。
加えてGhaleb H. Alnahdi (2013) やMichele A. Lobo・Mariola Moeyaert・Andrea Baraldi Cunha・Iryna Babik (2017) を参考にすればベースラインは少なくとも3プロットから5プロットは必要でしょう。
さてここまでマルチプルベースラインデザインについてご紹介してきました。
が、私たちは研究者ではありません。
ではここまで書いてきたマルチプルベースラインデザインのことを利用して、普段のABA自閉症療育にどう活かしていけるでしょうか?
以下、見て行きましょう。
ABA自閉症療育にマルチプルベースラインデザインをどう活かすか?
さて、マルチプルベースラインデザインでは、
(3)各参加者が同じ標的問題に取り組むために同じ介入を(順次に)受ける場合
(4)ターゲット課題設定が異なるが関連した問題の場面で、単一の参加者に同じ扱いを導入する場合
(5)場面は異なるが、単一の参加者に同じ介入を適用する場合
という条件がありました。
論文を見ていると参加者が複数人いて順次介入を行う「(3)各参加者が同じ標的問題に取り組むために同じ介入を(順次に)受ける場合」が採択されているケースがほとんどでしょう。
これは研究参加者を少なくとも3人以上は集めるデザインでした。
3人以上の同じような条件の人(例えば幼児期の男児自閉症)に対して介入を行い研究することで、例えば「幼児期の男児自閉症に効果のある介入」として論を持ちたいわけです。
これはこれで非常に大切なことですが、あなたは「自分のお子様」に効果のある介入を探しているはずです
ですから、あなたが主にマルチプルベースラインデザインをABA自閉症療育の参考にするのであれば、
(4)ターゲット課題設定が異なるが関連した問題の場面で、単一の参加者に同じ扱いを導入する場合
(5)場面は異なるが、単一の参加者に同じ介入を適用する場合
のいずれかになるでしょう。
複数人に対して介入が効果があるというのは魅力的ですが、あなたが関わるお子様は基本的には自分のお子様となるため複数人を扱う可能性はほとんどありません。
「(4)ターゲット課題設定が異なるが関連した問題の場面で、単一の参加者に同じ扱いを導入する場合」ですが、例えば、
(1)モデル提示
(2)教示
(3)リハーサル(ロールプレイのこと)
(4)フィードバック
の4要素で構成された「行動的スキル訓練(BST:Behavioral Skill Training)」という介入方法があります(参考 Raymond .G .Miltenberger, 2001)。
例えば、
『優しい声で「おはよう」とあいさつする』
『「貸して」と優しい声で物を借りる』
『お友達に「一緒にやろう」と誘いかける』
という3つの社会的スキルを「行動的スキル訓練」を用いて順次、介入をしたとしましょう。
もし3つのスキルについて「行動的スキル訓練」を用いて獲得が観察された場合、これは「行動的スキル訓練」という介入方法があなたのお子様にフィットしている可能性が高い、ということです。
これがわかるとどのようなメリットがあるでしょうか?
例えばある方法であなたがお子様に何かスキルを習得させることに成功したとしましょう。
園や学校の先生から「お子様にどのように関われば(支援すれば)良いでしょう?どうしましょう?」と相談があったとき、
あなたがお子様に何かスキルを習得させることに成功した事例が1件だけであれば、これはマルチプルベースラインデザインに沿えば根拠が低いことになります。
ただ1件ではなく3件、同じ介入方法でお子様がスキル習得したことがあれば、それは相手方に「XXXという方法で一度、やってみてください」と伝えやすくなるでしょう。
これは私は大きなメリットだと感じています。
「(5)場面は異なるが、単一の参加者に同じ介入を適用する場合」ですが、
(1)母方のおばあちゃんの前
(2)父方のおじいちゃんの前
(3)隣の家に住んでいるお兄さんの前
で「あいさつ」をすることを教えるとき、あなたが「あいさつのモデルを見せて、あいさつをしたあと強く褒める(モデリング+強化法)」を用いて介入を行ったとしましょう。
徐々にモデルを無くして行き(プロンプトフェイディング)、さらにそこまで強く褒めなくとも(強化子のリダクション)お子様のあいさつは継続したとします。
(1)母方のおばあちゃんの前
でそれが確認できました。
次に、
(2)父方のおじいちゃんの前
でもそれが確認できました。
最後に、
(3)隣の家に住んでいるお兄さんの前
でもそれが確認できました。
するとこのようなケースでも、相手方にどうやってお子様に支援するか相談されたとき「XXXという方法で一度、やってみてください」と伝えやすくなるでしょう。
ここまででご紹介したあなたのお子様だけに行う介入はデータ化するのであれば、どのようにデータ化すれば良いでしょう?
簡易的な方法もご紹介しておきます
例えば介入フェイズで以下のように点数化します。
・ できなかった(0点)
・ 侵襲度の高いプロンプト(例えば「おはようと言いなさい」と伝える)有りでできた(1点)
・ 侵襲度の低いプロンプト(例えばチョンと身体に触り促した)有りでできた(2点)
・ プロンプト無しでできた(3点)
このように点数化し、データを取って行くのも良いでしょう。
上の例では全てのグラフでそこまでは続けていませんが、
例えば「プロンプト無しでできた(3点)」が3回とか5回以上続くことを目的として介入を行っていく、ということで良いと思います。
「1点の侵襲度の高いプロンプト」と「2点の侵襲度の低いプロンプト」の部分はもっと細かく分けられると思いますので、そこは必要であればお子様によってチューニングすることも可能です。
例えば、
・ できなかった(0点)
・ 「おはようと言いなさい」とお子様の肩を前から掴んで目を見てはっきり伝えるプロンプト(1点)
・ 「おはようと言いなさい」と離れて目を見てはっきり伝えるプロンプト(2点)
・ 「何ていうのだった?」とお子様の肩を後ろから掴んで伝えるプロンプト(3点)
・ 「何ていうのだった?」とお子様の背面から伝えるプロンプト(4点)
・ 「ん?」など、気づきを促す声掛けと背中をちょんと触る(5点)
・ 背中をちょんと触る(6点)
・ プロンプト無しでできた(7点)
というような分け方も可能ですね?
※ 但しこのような点数化は点数の間隔が実は均等ではない(1点上がることのレベルアップの度合いが均等ではない)ため、必要に応じて途中で修正する必要が出てくることもあるでしょう
あまり小分けにしすぎてもややこしくなるのですが、データ化もするのであれば是非、最適を探してみてください。
またここまで特に並行してベースラインを測定することには言及していません。
ガチガチでやるのであれば私はターゲットとした3つ以上の行動について継続的にベースラインを測定し、順次介入を進めていくマルチプルベースラインデザインに準拠するべきでしょう。
ただABA自閉症療育をご家庭で実践する人は、ほとんどが研究者ではありません。
本ブログはそのような人向けに書いています。
ですから、何か自分が動くとき、今回で言えば「相手方にどうやってお子様に支援するか相談されたとき」に何と相手に伝えるか?
伝えても良いか?という、心の支えのようなものとして「マルチプルベースラインデザインというものがあったな」と付き合っていけば良いでしょう。
また例えば1つ目の場面や介入を行っている途中、まだベースライン測定を続ける段階である2つ目、3つ目のデータも良くなることがあるかもしれません。
例えば1つ目のスキルを教えたとき、教えていない2つ目、3つ目のベースラインデータに影響が出た場合です。
そのようなとき、それは「教えていないのにできたとき」なのでこの場合は上振れと捉えれば良いでしょう。
逆に1つ目の場面や介入を行っている途中に2つ目、3つ目のデータが悪くなった場合もまだ介入をそちらでは行っていないため、そこまで気にしなくても良いと思います。
これは剰余変数の可能性があり、研究としては困ってしまうものですが、
臨床的な観点だけで言えば、個人的には「できるようになって良かったね」と言えてしまうことも多いでしょう。
このときの説明は、スキルが「般化した」可能性がるのですが、これは悪いことではありません。
ですのでそのような場合は、喜んでもらって良いことの方が多いという印象です。
研究者の人は別だと思いますが、ご家庭でABA自閉症療育に取り組むときは、このくらいの距離感でマルチプルベースラインデザインと関わっていくと良いと思います。
さいごに
「マルチプルベースラインデザイン」は本章で前にご紹介をした「AーBデザイン」と比べて、そこで得られたデータの客観性は高く、正しく行うことで科学的な根拠(エビデンス)を示す程の有効性を持つものです。
特に本ブログページでも書いてきましたが「マルチプルベースラインデザイン」は園などの先生から「◯◯で困っています。どうしましょう?」と尋ねられたとき、相手方に「XXXという方法で一度、やってみてください」と伝えるとき、少し自信がつくことが私は1番のメリットだと思っています。
また「般化についてどこまで練習すれば良いか?」という疑問にもヒントをくれると思っていて、少なくとも般化訓練を意識してしっかりと療育をするのであれば「マルチプルベースラインデザイン」を参考にすれば「少なくとも3つ般化するまで」と言えるでしょう。
このように「マルチプルベースラインデザイン」を日々のABA自閉症療育に取り入れる利点は大きいです
ABAの自閉症療育介入の論文をいくつか読んだことがある人ならわかるかもしれませんが、ABAの自閉症療育介入の論文のほとんどは本ブログページでご紹介した「マルチプルベースラインデザイン」が利用されています。
そのため本ブログページでご紹介した「マルチプルベースラインデザイン」はシングルケースデザインの中でももっともメジャーなものと言えるでしょう。
個人的には「被験者を複数人扱うこと」と「介入を中断しなくて良いこと」の2点がそのことの理由に大きく貢献していると考えています。
本章の次のページでは「Changing-criterion design(基準変更デザイン)」をご紹介しましょう。
「Changing-criterion design(基準変更デザイン)」は個人的には面接を行うお子様に利用することに適しているデザインだと思っています。
面接で利用するとき、面接でホームワークを設計する場合です。
次の本章ブログページで「Changing-criterion design(基準変更デザイン)」をご紹介したのち、最後にシングルケースデザインを総括し、その後、機能分析に入ってきましょう。
【参考文献】
・ Agata Krasny – Pacini・Jonathan Evans (2018)Single-case experimental designs to assess intervention effectiveness in rehabilitation: A practical guide. Annals of Physical and Rehabilitation Medicine 61 p164–179
・ David H. Barlow・Michel Hersen (1984) SINGLE CASE EXPERIMENTAL DESIGNS; Strategies for Studying Behavior Change 2/ed 【邦訳: 高木 俊一郎・佐久間 徹 (1988) 一事例の実験デザインーケーススタディの基本と応用ー 二瓶社 (改訂 2008)】
・ Ghaleb H. Alnahdi (2013) Single-subject designs in special education: advantages and limitations. Journal of Research in Special Educational Needs
・ Kpolovie Peter James (2016)SINGLE-SUBJECT RESEARCH METHOD: THE NEEDED SIMPLIFICATION. British Journal of Education, Vol.4, No.6, pp.68-95, June 2016
・ Michele A. Lobo・Mariola Moeyaert・Andrea Baraldi Cunha・Iryna Babik (2017) Single-Case Design, Analysis, and Quality Assessment for Intervention Research. Journal of Neurologic Physical Therapy. 41(3) p187–197
・ 日本行動分析学会 (2019) 行動分析学辞典 丸善出版
・ Raymond .G .Miltenberger (2001)Behavior Modification : Principles and Procedures / 2nd edition 【邦訳: 園山 繁樹・野呂 文行・渡部 匡隆・大石 幸二 (2006) 行動変容方入門 二瓶社】