ABA的思考
私たちは普段生活している時、行動をみる際「医学モデル」という考え方を使っているようです。
ABAで行動を考える時この医学モデルと呼ばれるものとは違う考え方をします。
ABA療育では「行動をどうみるか(捉えるか)」ということは「基本の”き”」になってきます。
これはとても重要なことです。
この章では「どうやって行動を測定すれば良いか」を紹介していきますが、その前にこのページではまず医学モデルとはどういうものかを見ていきましょう。
杉山 尚子・島宗 理・佐藤 方哉・リチャード W マロット・マリア E マロット(1998)は『我々行動分析家は常に医学モデルと闘っている。世間一般の人も、多くの心理学者も、行動を医学モデルで考えがちだ。
たとえば、次の例を見てほしい。新聞報道によると、1996年度は、全国の中学高校で、教師への暴力、校内の器物破損などがの校内暴力が、前年度を31.7%も上回ったという。その理由を、ある教育関係者は、「抑圧感」が強まって、教師や機器に対してストレスを衝動的に発散させているからだという。
つまり、身体(心の)内部にある抑圧感というものが、暴力という形で行動に現れてくるのだと、考えているらしい。これこそ、医学モデルの行動観である』と述べています。
上の写真の本ですね。
この本は私もABAを後輩育成する際に、1番最初にお勧めする入門編の良本です。
上の例のように私たちは普段、何か行動の原因を求めようとした時「やる気がないから」「意志が弱いから」「引っ込み思案な性格だから」、「活力があるので」「意思が強いので」「主張できる性格なので」、などと、その人が行なった行動に対して「ラベル」を貼ることで行動の原因を説明することが多いでしょう。
杉山 尚子(2005)を参考にすれば「意思」や「やる気」や「性格」というものは行動に対してラベルを貼ることで、人は無意識のうちに「こころ」を想定し、問題行動を起こす原因はその「こころ」であると考えてしまいます。
「そんなことは当たり前だろう。原因とはそういうものだろう」と思ってしまったらあなたは「医学モデル」の罠にハマってしまっているかもしれません。
何か問題を解決したい時にABA的思考を用いるとするならば、一度「医学モデル」を離れる必要があります
行動の原因を探る際、逆に見る必要がある
奥田 健次(2012)は『人や動物の行動の原因について考えるときは「真逆」に見なければならないのである。つまり、その行動がなぜ起きるのかについての理由を考えるとき、その行動の前に何が起きたのかを考えるよりも、その行動の後に何が起きたのかを考えなければならないのだーー(中略)ーー医学モデルで扱っているのは、行動ではなく症状(あるいは状態)である。実に、多くの人(医師や心理士も含めて)が、行動と症状の区別をつけていないものである。』
と述べました。
普段生活をしている時、例えば私も自分の行動した理由を相手に伝える際「自身の意思の弱さ」や、「イライラしていたから」と、行動の原因にラベルを貼って説明することはあります。
ただABAを使って問題解決をするとなった時、上記の文献のように「真逆」に見て、「行動の後に何が起きたのか」というように観察して問題を捉え問題解決に導くことが基本です。
行動問題があッタ場合、一度「その後に何が起こっているか?」に着目する。
解決を目指す時はこのように捉えてみてください。
別に普段からそのように考える必要はないと思いますが以上の文献から2点、私からABA的な考え方を伝えます。
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(1)性格や意思というのは起こった行動に対して張られた「ラベル」と捉えます。そのため、お子さんの成長を促す時、「性格や意思を変える」といった大きなテーマに取り組むのではなく、「その時にしている行動を変える」という気持ちで取り組みましょう。
(2)普段している「行動の前に原因がある」としている考え方を「行動の後に原因がある」と、逆転の発想をすることで問題解決に取り組むようにしましょう。もし、解決したい行動問題があった場合には、お子さんが行動をした後、どのような結果が生じているか?を観察してみてください。
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行動の後の結果から、行動の原因を考えることで解決することは意外と多いです。
(ただし状況によっては原因が自分自身にあることも自覚することも多いと思いますので、辛い受け止め方になるかもしれません)
【参考文献】
・ 杉山 尚子・島宗 理・佐藤 方哉・リチャード W マロット・マリア E マロット(1998)行動分析学入門 ,産業図書 p9
・ 杉山 尚子 (2005) 行動分析学入門ーヒトの行動の思いがけない理由 集英社新書
・ 奥田 健次 (2012) メリットの法則 行動分析学・実践編 集英社新書