本章1つ前のページは、
「DTT、受容課題を家で実践してみようー初めて受容課題をする場合やお子様がまだ言葉をほとんど知らない場合(ABA自閉症療育をやってみる4)(https://en-tomo.com/2024/11/22/practice-dtt-acceptance-tasks-at-home1/)」
というタイトルで受容課題が初めて受容課題をする場合やお子様がまだ言葉をほとんど知らない場合にどのように行えば良いかを書いてきました。
本ブログページでは「受容課題を行ったことがある場合やお子様が既にいくつか知っている言葉がある場合」についてご紹介して行きます
「初めて受容課題をする場合やお子様がまだ言葉をほとんど知らない場合」と本ブログページでご紹介をする「受容課題を行ったことがある場合やお子様が既にいくつか知っている言葉がある場合」の大きな違いとしては、
1つ前のブログページでは受容課題を2つの選択肢で行いましたが、本ブログページでご紹介する受容課題は3つの選択肢で行うというものです。
そして1つ前のブログページで受容課題を紹介した際、
・ マストライアル:大量試行
・ ブロックローテーション:ブロック試行
・ ランダムローテーション:無作為順序提示
という言葉が出てきました。
まずは「マストライアル:大量試行」、「ブロックローテーション:ブロック試行」、「ランダムローテーション:無作為順序提示」について簡単に説明し、
「受容課題を行ったことがある場合やお子様が既にいくつか知っている言葉がある場合」の受容課題の方法をご紹介します。
受容課題にもいろいろなやり方があると思いますが、1つ前のブログページ同様、本ブログページでもO.Ivar Lovaas (2003) のマニュアルを参考に見て行きましょう。
「マストライアル:大量試行」、「ブロックローテーション:ブロック試行」、「ランダムローテーション:無作為順序提示」
以下「マストライアル:大量試行」、「ブロックローテーション:ブロック試行」、「ランダムローテーション:無作為順序提示」について解説して行きます。
マストライアル:大量試行
「マストライアル:大量試行(以下、マストライアル)」は1ターゲットだけを連続して選択してもらう段階です。
「大量試行」という名前の通り、決められたターゲットを連続して大量に練習します。
導入時点では選択肢はターゲットアイテムの1つのみ、それで正しく正答基準に乗ったとき、ステップを上げて別のアイテムも入れて行くのですが、
マストライアルの間はお子様に選んでもらうアイテムはターゲットアイテムだけです。
このとき、エラーレスラーニングに従い、ステップを上げて別のアイテムを入れるときはターゲットアイテムを例えば机の真ん中にして、別のアイテムを机の端に置き、徐々に位置を等位置に近づけて行く「刺激内プロンプト」を使用することもO.Ivar Lovaas (2003) では紹介されていますが、本ブログページではもう少し簡易的な方法をご紹介します。
ブロックローテーション:ブロック試行
「ブロックローテーション:ブロック試行(以下、ブロックローテーション)」はターゲットアイテムの他にもう一つのアイテムも選択してもらうことが始まるステップです。
例えば以下のように、
1試行目:ターゲットアイテム
2試行目:ターゲットアイテム
3試行目:ターゲットアイテム
4試行目:ターゲットアイテム
5試行目:他のアイテム
6試行目:他のアイテム
7試行目:他のアイテム
8試行目:他のアイテム
9試行目:ターゲットアイテム
10試行目:ターゲットアイテム
11試行目:ターゲットアイテム
12試行目:他のアイテム
13試行目:他のアイテム
14試行目:他のアイテム
15試行目:ターゲットアイテム
16試行目:ターゲットアイテム
17試行目:他のアイテム
18試行目:他のアイテム
をお子様に選択してもらうことを行うため、「ブロックローテーション」はターゲットアイテムの他にもう一つのアイテムも選択してもらうことが始まるステップとなります。
ブロックローテーションを行っていてもし切り替えのタイミングでお子様が「プロンプト付き正答」や「エラー」を起こした際は、プロンプトなしでターゲットができるまでトライアルを行い、「プロンプト無し正答」ができたとき切り替えを行うようにしてください。
トライアル数が伸びてしまうことは構いません。
ターゲットを切り替えて良い例
3試行目:ターゲットアイテム(プロンプト無し正答)
4試行目:ターゲットアイテム(プロンプト無し正答)
5試行目:ターゲットではない他のアイテム
↑3試行目と4試行目の「コップ」が「プロンプト無し正答」できているため、クツをターゲットとした5試行目に移って良い
ターゲットを切り替えたらダメな例
3試行目:ターゲットアイテム(プロンプト無し正答)
4試行目:ターゲットアイテム(プロンプト有り正答 or エラー)
5試行目:ターゲットではない他のアイテム
↑4試行目の「ターゲットアイテム」が「プロンプト有り正答 or エラー」のため、「他のアイテム」をターゲットとした5試行目に移ってはならず、5試行目も「ターゲットアイテム」をターゲットとして継続し、「ターゲットアイテム」の「プロンプト無し正答」が出現してから「他のアイテム」のターゲットに移る
またブロックローテーションの簡易版として、
1試行目:ターゲットアイテム
2試行目:他のアイテム
3試行目:他のアイテム
4試行目:ターゲットアイテム
5試行目:ターゲットアイテム
6試行目:他のアイテム
7試行目:他のアイテム
8試行目:ターゲットアイテム
と、トライアル数が間延びしてしまい上手くいかない場合やご家庭の療育リソースの都合によっては短縮したものを使用するのも良いと思います。
私は個人的にはこの短縮版を使用してABA自閉症療育を行うことが多いです。
ランダムローテーション:無作為順序提示
ブロックローテーションはターゲットアイテムの他にもう一つのアイテムも選択してもらう、つまり2つのアイテムを選択し分ける段階でした。
「ランダムローテーション:無作為順序提示(以下、ランダムローテーション)」では、2つ以上のアイテムを選択し分けます。
本ブログページは「受容課題を行ったことがある場合やお子様が既にいくつか知っている言葉がある場合」をご紹介するページです。
そのためランダムローテーションについては3つのアイテムを選択し分ける内容で書いて行きます。
またランダムというのは「規則性が無い」ということです。
例えば、
ABABABAB⚪︎BAB
や
AABBAABB⚪︎ABB
↑「上の文字列で⚪︎には何が入りますか?」と聞かれると多くの人は「A」と答えるでしょう?
上のような場合は「規則性がある」と思います。
規則性がないランダムローテーションを組むときは規則性がないかどうか気をつけましょう。
ブロックローテーション・ランダムローテーションの注意点
ブロックローテーション・ランダムローテーションの注意点として、お子様の誤学習を防ぐために基本的にはその日の課題を終了するときや休憩に入るタイミングでは「プロンプト付き正答」や「エラー」ではトライアルを終了せず、
その日の課題を終了するときや休憩に入るタイミングは「プロンプト無し正答」で終了するようにしてください。
また「プロンプト付き正答」や「エラー」が出現した際は2つ以上のアイテムの位置(左中右)は変えず、同じ位置にて「プロンプト無し正答」が出やすいように工夫します。
「受容課題を行ったことがある場合やお子様が既にいくつか知っている言葉がある場合」の受容課題の方法
「受容課題を行ったことがある場合やお子様が既にいくつか知っている言葉がある場合」について見て行きましょう。
例として本ブログページでは「おさら」をターゲットとします。
※もし本ブログページと同じで「おさら」をターゲットとする場合は割れるものは避け、また他のに選択するアイテムと大きさもあまり変わらないお皿にしましょう
※「おさら」は例ですので、他のアイテムを使用しもらっても大丈夫です
本章1つ前のブログページの内容も引き継ぎ、お子様は「コップ」や「クツ」など既にお子様は2つだけのアイテムであればランダムローテーションで選択し分けることができていることとします。
「受容課題を行ったことがある場合やお子様が既にいくつか知っている言葉がある場合」では2つ、もしくは2つ以上のアイテムをランダムローテーションで選択し分けることができている場合に行ってください。
ステップ1:マストライアル(選択肢1つ)
ターゲットの「おさら」を1つお子様の前に置いて、「おさら」と伝えお子様がおさらを触ります(指をさすでもコップを話つでも良い)。
連続5回、もしくは5回中4回プロンプト無しでできたらステップ2へ進みましょう。
ステップ2:マストライアル(選択肢2つ)
「おさら」の他に「コップ」を等位置に置き、「おさら」と伝えお子様がおさらを触ります。
※ 「クツ」でもOK
このとき「おさら」と「コップ」2つのものの位置が均等な位置に置いてください。
等位置の場所で「おさら」と「コップ」の位置を入れ替える(左右を入れ替える)は行います。
連続3回、もしくは5回中4回プロンプト無しでできたらステップ3へ進みましょう。
ステップ3:マストライアル(選択肢3つ)
「おさら」の他に「コップ」と「クツ」を等位置に置き、「おさら」と伝えお子様がおさらを触ります。
このとき「おさら」と「コップ」そして「クツ」3つのものの位置が均等な位置に置いてください。
等位置の場所で「おさら」「コップ」「クツ」の位置を入れ替える(左中右を入れ替える)は行います。
連続3回、もしくは5回中4回プロンプト無しでできたらステップ4へ進みましょう。
もしステップ2、ステップ3が難しい場合は本章1つ前のブログページ
「DTT、受容課題を家で実践してみようー初めて受容課題をする場合やお子様がまだ言葉をほとんど知らない場合」
にてご紹介した手続きで「おさら」を導入してみてください
ステップ4:ブロックローテーション(選択肢3つ)
ステップ4では「おさら」と「コップ」もしくは「くつ」の2つの選択肢を選択し分けます。
「おさら」と「コップ」そして「クツ」3つのものの位置が均等な位置に置いてください。
等位置の場所で「おさら」「コップ」「クツ」の位置を入れ替える(左中右を入れ替える)は行います。
例えば、
1試行目「おさら」と伝えお子様がおさらを触る
2試行目「クツ」と伝えお子様がクツを触る
3試行目「クツ」と伝えお子様がクツを触る
4試行目「おさら」と伝えお子様がおさらを触る
5試行目「おさら」と伝えお子様がおさらを触る
6試行目「クツ」と伝えお子様がクツを触る
7試行目「クツ」と伝えお子様がクツを触る
8試行目「おさら」と伝えお子様がおさらを触る
です。
例では8トライアルと短縮したものを使用していますが、難しいようでしたら上で書いた長いバージョンのトライアルを使用してください。
8回中7回プロンプト無しでできたらステップ5へ進みましょう。
またプロンプトを使用して回数が伸びてしまうこともあるでしょう。
その場合は全体で90パーセント以上プロンプト無しでできたらステップ5へ進む、ということを目安にしてください。
「ブロックローテーション」が1番の山場と言っても過言ではありません。
もしその日難しそうであれば日を改めても良いでしょう。
また何日も達成できない、ということがあるようであればターゲットを変えてみることも検討してください。
ステップ5:ランダムローテーション(選択肢3つ)
これまでのブロックローテーションでは順番に規則性がありましたが、ランダムローテーションではできるだけ規則性を無くしてランダムに行うようにしましょう。
このとき3つのアイテムを取り分けることを始めて行います。
例えばターゲットが「おさら」、他のアイテムが「コップ」と「クツ」の場合であれば、
1試行目「おさら」と伝えお子様がおさらを触る
2試行目「クツ」と伝えお子様がクツを触る
3試行目「おさら」と伝えお子様がおさらを触る
4試行目「クツ」と伝えお子様がクツを触る
5試行目「コップ」と伝えお子様がコップを触る
6試行目「おさら」と伝えお子様がおさらを触る
7試行目「クツ」と伝えお子様がクツを触る
8試行目「おさら」と伝えお子様がおさらを触る
9試行目「おさら」と伝えお子様がおさらを触る
10試行目「コップ」と伝えお子様がコップを触る
または、
1試行目「コップ」と伝えお子様がコップを触る
2試行目「おさら」と伝えお子様がおさらを触る
3試行目「おさら」と伝えお子様がおさらを触る
4試行目「クツ」と伝えお子様がクツを触る
5試行目「コップ」と伝えお子様がコップを触る
6試行目「コップ」と伝えお子様がコップを触る
7試行目「おさら」と伝えお子様がおさらを触る
8試行目「クツ」と伝えお子様がクツを触る
9試行目「おさら」と伝えお子様がおさらを触る
10試行目「おさら」と伝えお子様がおさらを触る
と言った感じです。
ランダムローテーションではターゲットが「おさら」なので10回中5回(50パーセント)は「おさら」で構成し、残りの50パーセントを他のアイテムで構成します。
10回中9回プロンプト無しでできたらステップ6へ進みましょう。
またプロンプトを使用して回数が伸びてしまうこともあるでしょう。
その場合は全体で90パーセント以上プロンプト無しでできたらステップ6へ進む、ということを目安にしてください。
ステップ6:ランダムローテーション(選択肢3つ)
「ステップ5」と同じです。
「ステップ6」では「ステップ5」と同じことを行います。
但し、
・ 日を跨ぐ
・ 人を変える
・ 日も跨いで人も変える
上のいずれかの条件で「ステップ6」を行ってください。
また上の条件には入れませんでしたが「部屋を変える」等、場所を変えることも有効です。
「ステップ6」が完了したとき、ここで紹介している「おさら」についてはマスターしたと考えるようにしましょう。
受容課題その他に意識したいこと
本ブログページ、そして1つ前のブログページの内容からここまで、
・ 実際のアイテムで受容課題を行う
・ 机の上で受容課題を行う
という方法でご紹介してきました。
以下、別の方法も見ていきましょう。
受容課題で絵カードを用いる
もし可能であれば「絵カード」を用いて受容課題を行って大丈夫です。
一般的には実物の方が簡単と考えられていますので今回は実物で行うことをご紹介しました。
ただ「絵カード」が可能なのであれば絵カードの方が良いでしょう。
「絵カード」であれば例えば「食べてるイラスト」を見せて受容課題を行い「動詞」を教えて行くことも可能です。
「色」や「形」も教えやすいと思います。
いろいろと絵カードでできた方が便利なことも多いため、絵カードにどこかではシフトして行くようにしましょう。
ホワイトボードで受容課題を行う
本ブログでは何度か「ホワイトボードを使って受容課題を行う」ことをご紹介してきました。
「机の上で受容課題を行う」は基本形かなと思ったので今回この方法で記載してきましたが、A3サイズのホワイトボードに絵カードをマジックテープで貼り付けて行う方法も良いです。
その方がお子様が選択アイテムをしっかり見てくれる可能性があります。
どちらが良いかはお子様によるところもあるので一概には言えませんが、ホワイトボードを使った方法も知っていて損はないでしょう。
受容課題でどんなことが教えられる?
今後の展望としては、
・ 名詞(名前を伝え対応するアイテムを選ぶ、名詞だけで「身の回りのもの」「のりもの」「くだもの」「どうぶつ」等と多岐にわたる)
・ 動詞(動詞を伝え対応するアイテムを選ぶ)
・ ものの用途(用途を伝え対応するアイテムを選ぶ、例えば「かぶるもの」と言ってぼうしを選択する)
・ 色(色を伝え対応するアイテムを選ぶ)
・ 形(形を伝え対応するアイテムを選ぶ)
・ 比較表現(比較表現を伝え対応するアイテムを選ぶ、例えば「大きい」と伝え大きな丸と小さな丸で大きな丸を選ぶ)
・ 位置(※ 方法は読み進めていけば下で文章で紹介)
・ カテゴリー(カテゴリーを伝え対応するアイテムを選ぶ、例えば「どうぶつ」と言って犬を選択する)
・ 5W1H(5W1Hを伝え対応するアイテムを選ぶ、例えば「どこ」と言って「男の子」「公園」「夜」の絵カードから「公園」を選択する)
・ 数(数を伝え対応するアイテムを選ぶ)
・ ひらがな(ひらがなを伝え対応するアイテムを選ぶ)
今、思いつくものをザーッと上げましたが、上のようなものを教えて行くと良いでしょう。
既に知っているものは飛ばしてもらって構いません。
「数」や「ひらがな」については特に理由がなければ年中さんの夏以降に教えて行くということで大丈夫かと思います。
応用形としては例えば机の上に箱を置いて積み木を1つ渡し、「前」と言ったときに箱の前に積み木を置く、「横」と言ったときに箱の横に積み木を置くなどの形も可能です(「位置」を教える)。
受容課題で行ったものは次のレベルである「表出課題」へと繋げて行くようにしましょう。
口酸っぱいようだがデータは取っておこう
詳しくは本章1つ前のブログページをご参照いただきたいですが、
「プロンプト無し正当」・・・「+」
「プロンプト有り正当」・・・「p」
「エラー」・・・・・・・・・「ー」
「休憩」・・・・・・・・・・「/」
とトライアルのデータは基本的には残すようにしておきましょう。
さいごに
「ABA自閉症療育をやってみる」の章でついに受容課題を行うところまで来ました。
受容課題を通してマスターするものをどんどんと増やしていってあげて欲しいです。
DTTには、
・マッチング課題
・受容課題(じゅようかだい)
・表出課題(ひょうしゅつかだい)
という3つの大きなカテゴリーがあると覚えてもらって良いと思います。
難易度の順で言えば何をターゲットとするかにもよるところはあるものの、
(簡単)「マッチング課題」 < 「受容課題」 < 「表出課題」(難しい)
の順番で難しいです。
受容課題で行ったものは次のレベルである「表出課題」へと繋げて行くようにすると上で書きましたが、
もし本ブログページでご紹介している受容課題が難しかった場合はマッチング課題に移行するようにしましょう。
受容課題の次はマッチング課題をご紹介して行きますが、ただその前にDTTの「マッチング課題」、「受容課題」、「表出課題」について簡易的な説明を行うページを1つ作成しました。
本章次のページはその内容となっていますが、その内容をご覧になっていただいて、DTTのマッチング課題、そして表出課題をご紹介して行きます。
<参考文献>
・ O.Ivar Lovaas (2003) TEACHING INDIVIDUALS WITH DEVELOPMENTAL DELAYS 【邦訳: 中野 良顯(2011) 自閉症児の教育マニュアルー決定版・ロヴァス法による行動分析治療 ダイヤモンド社】