ルールはポータブル(持ち運び可能)!まるで魔法みたい!!ルールポータブル化故のメリットとデメリット(ABA:応用行動分析学の言語行動6)

本章1つ前のページ「ルール支配行動と随伴性形成行動、それぞれの強みと弱み(ABA:応用行動分析学の言語行動5)(https://en-tomo.com/2024/08/23/rule-governed-behavior-and-contingency-forming-behavior/)」では、

「ルール支配行動」と「随伴性形成行動」について、

と述べました。


本ブログページは「ルールはポータブル(持ち運び可能)!まるで魔法みたい!!ルールポータブル化故のメリットとデメリット」というタイトルです。


Enせんせい

「ルールはポータブル(持ち運び可能)!まるで魔法みたい!!」と、私は言いたかった(笑)

うん!音感がとても良い!!言葉の配列も素敵ッ!!!

「ルールはポータブル!まるで魔法みたい!!」これは口に出して言いたい言葉!!!


三田村 仰 (2017) は「ルールはポータブル」、「まるで魔法みたい」と「はじめてまなぶ行動療法」という本の中で書いています。


三田村 仰 (2017)

Enせんせい


ルールはポータブル!まるで魔法みたい!!

「文字が残せる」、これはとても偉大なことだと思いませんか?

私たちはが経験したことがないことを、私たちの前に生きていた人たちの知恵を継承することができるのです。

また現代に生きている人の知恵も共有してもらうことが可能となります。

これは、その人に会ったことがないにも関わらずです。

本当に凄いことだと思います。


例えば孫氏は「およそ戦争の原則としては、敵国を傷つけずそのままで降伏させるのが上策で、敵国を討ち破って屈服させるのはそれに劣る」と述べたようです(金谷 治,2000)

孫氏は紀元前500年ごろ中国に居た人物となります。

国が違うどころか、時代が全く違うのでもちろん私は会ったことがありませんし私の人生の中で孫子に出会うことは不可能でしょう。


また国も時代も同じですがさんが三田村 仰さんが「ルールはポータブル」、「まるで魔法みたい」と「はじめてまなぶ行動療法」という本の中で書いていたことでこの素敵なキーワードに出会いました。

三田村さんは2024年現在、ご在命ですが私はまだお会いしたことはありません。

でも三田村さんの頭の中にあった本(文字、言語)を通して共有していただいて、私は知ることができます。


Enせんせい

これは本であっても、言い伝えであってもです。

William・O’ Donohue・Kyle E. Forguson (2001) はルールは社会の相互作用を促進し、広範囲に対話を促し、世代から世代への文化の伝承に全面的に関わっている特別なタイプの弁別刺激であると述べています。


さてここからルールがポータブル化できる故のメリットとデメリットについて書いてきましょう。

1つのメリットは上でも書いてきた時代や場所を超えて知識の共有、継承ができるということでしたね?

これだけでも充分ルールのメリットと言えるかと思いますが、以下からはそれ以外のメリットとデメリットについて書いて行きます。



ルールがポータブル化できる故のメリット

上では知識の共有、継承ができるということについて書きました。

これはルールがポータブル化(持ち運び可能)であることで叶う、他者から「共有してもらえる」「教えてもらえる」というメリットでした。


人から教えてもらったルールを「教示:きょうじ」、自分自身で生成したルールを「自己ルール:じこるーる」と言います(参考 三田村 仰,2017)

次に「自己ルール」によるルールがポータブル化できる故のメリットについても見て行きましょう。


上でご紹介した孫氏の例は「教示」の例でした。

孫子三田村さんから教えてもらったから「人から教えてもらったルール = 教示」です。


「自己ルール」の例を以下見ていきます。


三田村 仰 (2017) は東京の銀座を歩いていて駅まで帰ろうとしたとき、「あの通りを曲がってこの店まで来た」と頭の中でつぶやいて駅まで戻ることができる、つぶやいたルールをもとに無事駅まで戻ることができると述べました。

他にも三田村 仰 (2017) は例えば教室で返却されたテストの結果を見た瞬間「このままだとまずい、勉強しないと・・・」とつぶやいたなら、家に帰って、机の前でこれをつぶやきながら真面目に勉強することもできるとも述べています。


magic!

「頭の中でつぶやいて駅まで戻ること」や『「このままだとまずい、勉強しないと・・・」とつぶやいて勉強を始めること』は、目の前に無い弁別刺激を持ち運ぶことができると言うことです。


Enせんせい

これは他者からルールを教えてもらえるというポータブル化「教示」の知識の共有、継承ができるということのメリットとは違った「自己ルール」におけるルールポータブル化のメリットと言えるでしょう。


Steven C. Hayes・Kirk D. Strosahl・Kelly G. Wilson (2012) は、

「ルール支配行動」のおかげで人間はかなり後から生じる環境変化にも対応し振る舞うことができるようになったと述べています。

著書の中では『「おじさんと良い関係を築いておけば、20年後には遺言にあなたの名前を入れてくれるわよ」というルールに今からでも反応することが可能だ』という少しユニークなエピソード例も紹介されました。


さてここまでの内容を見ればルールがポータブル化できることはメリットしかないように見えたかもしれません。

以下では、ポータブル化できることのデメリットもみて行きます。



ルールがポータブル化できる故のデメリット

ポータブル機器の例えばスマートフォンであれば「今日は、持って行かないでおこう」と家に置いて外出することが可能です。


でも身体の中にあるポータブル化されたルールはどうでしょうか?


Enせんせい

例えばうつ病の症状の1つに「反すう」という症状があります。

「反すう」とは同じ考えがぐるぐると頭を回ってしまうことです。

1日のほとんどをこの「反すう」に費やしてしまうこともあるのですが、これは本人にとってとても辛いことだと思います。

もしスマートフォンのように手放してこの考えをあっちに置いておくことができればどれほど楽でしょうか?


また不安障がいでは、例えば人前で話すことに不安を覚え、人前で上手く話せないという症状を持つ人もいます。

例えばこのとき「人と話すとき、失敗してはいけない」というルールが影響していたとしましょう。

私たちはルールは一旦、完全にあっちに置いておいて、ということはできませんが、

スマートフォンのように手放して置いておくことができれば楽だと思います。


これは困ってしまいます。

そして、辛いことかもしれません。

他の場所に置いておく、ということができればコントロールも可能かもしれないのですが、私たちの身体はそのようにできておらず、便利な側面も多いルールをなかなかコントロールができません。




さいごに

本ブログページではルールがポータブル化のメリットとして「教示」にて知識の共有や、継承ができることについて書いてきました。

直接会ったことのない人の考え方を知ることができることは、私たち人類の発展にもの凄く寄与してきたことでしょう。

またポータブル化は「自己ルール」によって持ち運べる弁別刺激の存在を作れるというも大きく、私たちが目の前にない環境から受ける刺激だけに反応すること無く長い時間が経ったあとでも行動が継続できるという大きなメリットをもたらしてくれます。


反面、ルールポータブル化のデメリットとして本ブログページでは一度ルールが形成されてしまうと身体から切り離して置いておくことができない故にしんどくなってしまうことがあるということを書きました。


例えばこのことに対する対応策ですが「不安や焦りを一旦置いておくことを実践した日(マインドフルネス)、気付き(ABA:応用行動分析コラム54)(https://en-tomo.com/2024/05/24/the-day-i-practiced-against-anxiety-and-impatience/)」

で書いた内容のように「今」に目を向けて不安等と距離を置く感覚で過ごすことは対応策の1つと言えるでしょう。


Enせんせい

さて、次のページからは「関係フレーム理論(Relational Frame Theory:RFT)」というものをご紹介します。


本章一番最初のブログページ「ABAにおける言語行動、イントロダクション:おまけ【B.F.Skinnerの提唱した言語行動とチョムスキー】(ABA:応用行動分析学の言語行動1)(https://en-tomo.com/2023/11/03/introduction-of-verbal-behavior-in-aba/)」で、


ABAでの言語行動の発展について、ざっくりと2つに分けるとすれば、



からの、



の2つの流れを汲んで現在、発展をしていると私は思っています。

と書きました。


「ABAにおける言語行動、イントロダクション:おまけ【B.F.Skinnerの提唱した言語行動とチョムスキー】(ABA:応用行動分析学の言語行動1)」のサムネイル

実は本章、本ブログページも含む、



ここまでの6つのブログページは「1、ABAに多大な貢献をしたB.F.Skinnerの提唱した言語行動」に該当する内容でした。


次の本章のブログページからは「2、その後に登場した関係フレーム理論(以下、RFT:Relational Frame Theory)」に該当する内容へと入っていきます。

本章の次回ブログページはは少し長めのページとなってしまう予定です。

どうぞよろしくお願いいたします!



【参考文献】

・ 金谷 治 (2000) 新訂 孫氏 岩波文庫

・ 三田村 仰 (2017) はじめてまなぶ行動療法 金剛出版

・ Steven C. Hayes・Kirk D. Strosahl・Kelly G. Wilson (2012) Acceptance and Commitment Therapy The Process and Practice of Mindful Change 【邦訳: 武藤 崇・三田村 仰・大月 友 (2014) アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)第2版ーマインドフルな変化のためのプロセスと実践ー 星和書店】

・ William・O’ Donohue・Kyle E. Forguson (2001) The Psychology of B.F.Skinner 【邦訳: 佐久間 徹 (2005) スキナーの心理学 応用行動分析(ABA)の誕生,二瓶社】